【保存版】徳島での会社設立ガイド|株式会社と合同会社の6つの違いと選び方の3つのポイント~後編~

みなさん、こんにちは。徳島の税理士・中小企業診断士 逢坂剛です。
前回の記事では、株式会社と合同会社の設立手続きや費用、組織運営など6つの違いについて詳しく解説しました。前回の記事は「株式会社と合同会社の6つの違いと選び方の3つのポイント~前編~」
今回はその後編として、具体的にどのような方がどちらの法人形態を選ぶべきか、判断のポイントを掘り下げていきます。
徳島で「株式会社」が向いているのはこんなケース
ここまで比較してきた内容を踏まえて、具体的にどのような場合に株式会社を選ぶべきかを見ていきましょう。
もしあなたの事業計画が以下のケースに当てはまるなら、株式会社の方がより良い選択肢である可能性が高いでしょう。
- 融資や取引先からの信用を重視する場合
- 将来的に上場や大規模展開を視野に入れている場合
まずは、事業の基盤となる「信用」の面から解説します。
融資や取引先からの信用を重視する場合
事業を運営していく上で、外部からの「信用」が重要だとお考えの場合は、株式会社が適しています。
一般的に、株式会社は合同会社に比べて社会的な認知度と信用度が高いと評価される傾向にあるためです。
例えば、金融機関から融資を受ける際の審査では、組織としてのしっかりとしたルール(株主総会や取締役会など)が定められている株式会社の方が、安心材料と見なされることがあります。
また、特に大企業との取引を考えている場合、相手方の与信管理の都合上、株式会社であることが取引の前提条件となっているケースも少なくありません。
- 株式会社が信用面で有利な場面:
- 金融機関からの融資交渉
- 大手企業や官公庁との取引
- 人材採用活動における応募者へのアピール
もっとも、近年は合同会社の認知度も着実に向上しており、その差は年々縮小しています。

将来的に上場や大規模展開を視野に入れている場合
将来のビジョンとして、株式上場(IPO)や、外部の投資家から多くの資金を集めて事業を大きく成長させたいと考えているなら、選択肢は株式会社しかありません。
これは、株式会社だけが「株式」を発行して資金を調達できる仕組みを持っているからです。
ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資を受け入れることで、自己資金や融資だけでは実現できないような、スピーディーで大規模な事業展開が可能になります。
もちろん、最初は合同会社として設立し、事業の成長に合わせて後から株式会社へ組織変更することも可能です。
ただし、その際には変更手続きのための時間や費用が発生します。
この組織変更については、後の「よくある質問(FAQ)」で解説します。
- 株式会社を選ぶべき将来のビジョン:
- 株式上場(IPO)を目標にしている
- ベンチャーキャピタルなどから数千万円~数億円規模の出資を受けたい
- M&A(会社の売却や合併)も将来の選択肢として考えている
- 従業員にストックオプションを付与するなど、資本政策を柔軟に行いたい

徳島で「合同会社」が向いているのはこんなケース
反対に、合同会社にはどのようなメリットがあり、どういった事業に適しているのでしょうか。
株式会社の知名度や信用度も魅力的ですが、合同会社ならではの手軽さや自由度の高さが、あなたのビジネスにぴったりと合う場合も多くあります。
- コストを抑えてスピーディに起業したい場合
- 少人数・家族経営で柔軟な経営をしたい場合
ご自身の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。
コストを抑えてスピーディに起業したい場合
何よりもまず、事業を始める際の初期費用を抑え、一日でも早くスタートを切りたいという方には、合同会社が最適です。
以前にも触れた通り、合同会社の設立費用(法定費用)は約6万円からと、株式会社の約20万円に比べて14万円以上も安く抑えられます。
この差額は、徳島で事業を始める上での運転資金や、ホームページの制作費、広告費など、ビジネスを加速させるための投資に回すことができます。
また、定款の認証手続きが不要なため、設立にかかる期間も短縮できる点も大きなメリットです。
- 合同会社が持つコスト・スピード面のメリット:
- 設立費用(法定費用)が株式会社の3分の1以下で済む
- 浮いた費用を事業そのものに投資できる
- 手続きがシンプルなため、事業開始までの期間が短い
- まずは小さく事業を試したい「スモールスタート」に最適

少人数・家族経営で柔軟な経営をしたい場合
気心の知れた仲間やご家族など、少人数で会社を経営していく場合には、合同会社の自由度の高さが大きな強みとなります。
株式会社では、出資額(株式の数)に応じて利益を配分するのが原則です。
しかし合同会社では、定款で自由にルールを決めることで、例えば「出資額は少ないけれど、技術や営業で大きく貢献してくれたメンバーに多くの利益を配分する」といった柔軟な対応が可能です。
意思決定も、出資額に関係なく、原則として社員一人一票で行えるため、対等なパートナーシップを築きやすいと言えるでしょう。
- 少人数経営における合同会社のメリット:
- 利益の配分方法を自由に決められる(貢献度に応じた分配など)
- 役員の任期がないため、面倒な更新手続きが不要
- 株主総会のような形式的な会議を開く必要がない
- 社員同士の合意で、迅速かつ柔軟に経営判断を下せる

株式会社・合同会社どちらを選ぶべき?判断のポイント2選
ここまで両者のメリット・デメリットを見てきましたが、「結局、自分の場合はどちらがいいのだろう?」と、まだ迷われている方もいらっしゃるかもしれません。
最終的な判断を下すために、ここでは特に重要となる2つの判断ポイントをご紹介します。
- 将来のビジョン・事業計画から逆算して考える
- 銀行・士業など外部専門家の意見を参考にする
一つずつ、ご自身の状況に当てはめて考えてみましょう。
将来のビジョン・事業計画から逆算して考える
最も大切なのは、設立時のことだけでなく、3年後、5年後、10年後の会社の姿を想像し、そこから逆算して今どちらを選ぶべきかを判断することです。
もしあなたが、将来的に外部からの出資を受けて事業を大きく成長させたい、いつかは上場も目指したい、という野心的なビジョンをお持ちなら、迷わず株式会社を選ぶべきです。
逆に、地域に根ざしたお店を堅実に続けたい、気の合う仲間と自分たちのペースで働きたい、といったビジョンであれば、合同会社の設立・運営コストの低さや経営の自由度が大きな魅力となるでしょう。
- ご自身に問いかけてほしい質問リスト:
- 5年後、会社に自分たち以外の出資者(株主)がいてほしいか?
- 事業を大きくするために、外部からの資金調達は不可欠か?
- 経営の意思決定は、常に自分たちのグループ内だけで完結させたいか?
- 会社運営の手間やコストは、できる限りシンプルに保ちたいか?
銀行・士業など外部専門家の意見を参考にする
自分一人で悩んでしまったときは、客観的な視点を持つ外部の専門家の意見が、重要な判断材料になります。
例えば、創業融資を申し込む予定の金融機関(阿波銀行や徳島大正銀行など、徳島県内の地元の銀行や日本政策金融公庫)の担当者に、「この事業計画で設立する場合、株式会社と合同会社で融資審査に与える印象は変わりますか?」と率直に尋ねてみるのも一つの手です。
また、私たちのような税理士や、登記手続きの専門家である司法書士は、これまで数多くの会社設立に立ち会ってきました。
それぞれの法人形態が持つ税務上のメリット・デメリットや、後々起こりうるトラブル事例など、実体験に基づいた具体的なアドバイスが可能です。
- 相談すべき専門家と質問のポイント:
- 金融機関: 事業計画を伝えた上で、法人形態による融資審査への影響を聞く。
- 税理士: 株式会社と合同会社のどちらがご自身の事業に適しているか相談するのはもちろん、資本金の額や役員報酬の設定といった、設立前に決めておくべきお金に関する重要事項について専門的なアドバイスを求める。
- 司法書士: 設立手続きだけでなく、将来の増資や役員変更などの手続きの違いについて確認する。
よくある質問(FAQ)|徳島での会社設立に関する疑問を解消
最後に、徳島で会社設立を検討されている方から、私たちがよくお受けする質問とその回答をまとめました。
皆さまが抱える疑問の解消に、少しでもお役立てできれば幸いです。
- 合同会社から株式会社への変更はできる?
- 税金面で有利なのはどちら?
- 補助金の申請に有利な形態は?
それでは、一つずつ見ていきましょう。
合同会社から株式会社への変更はできる?
はい、法律上、合同会社から株式会社へ変更すること(またはその逆)は可能です。 これを「組織変更」と呼びます。
ただし、手続きは簡単ではありません。 社員全員の同意を得たり、債権者(取引先や金融機関など)を保護するための手続き(一定期間、異議を申し立てる機会を与えるなど)を経たりする必要があります。
実際には、合同会社から株式会社への変更は実務上もみるケースです。
以前にも触れた通り、「まずは設立コストの安い合同会社でスタートし、事業が成長して外部からの資金調達が必要になった段階で株式会社へ組織変更する」というケースは一般的です。
・組織変更のポイント:
- 合同会社 ⇔ 株式会社、どちらの変更も法律上は可能。
- 変更手続きには、社員全員の同意や債権者保護手続きが必要。
- 登記の変更などに費用と時間がかかる。
- 一般的には、合同会社から株式会社への変更の方が多い。
税金面で有利なのはどちら?
会社の利益に対して課される法人税などの税金において、株式会社と合同会社の間に有利・不利はありません。
税法上、どちらも同じ「普通法人」として扱われるため、適用される税率や税金の計算方法は同じです。
利益が同じであれば、納める税金の額も同じになります。
ですので、「節税のために合同会社を選ぶ」あるいは「株式会社の方が税務署からの目が厳しい」といったことはありません。
法人形態の選択が、会社の利益にかかる税額に直接影響することはない、とご理解ください。
- 税金に関するまとめ:
- 法人税・法人住民税・法人事業税: 差はありません。
- 消費税: 差はありません。
- 役員報酬の扱い: 経費として認められるためのルールは、実質的に同じです。
- 結論: 税金の有利・不利を理由に法人形態を選ぶ必要はありません。
補助金の申請に有利な形態は?
原則として、国や徳島県、市町村が公募する補助金・助成金の申請において、株式会社か合同会社かという法人形態が有利・不利に働くことはありません。
補助金の審査で重視されるのは、あくまで事業計画の内容そのものです。
例えば、その事業が持つ新規性や市場性、地域経済への貢献度、雇用を生み出す可能性といった点が評価の対象となります。
募集要項の対象者欄にも「中小企業者」などと記載されていることがほとんどで、これには株式会社も合同会社も含まれます。
法人形態を気にするよりも、説得力のある事業計画書を作成し、募集要項の条件を一つひとつ満たしていくことが採択への一番の近道です。
- 補助金申請のポイント:
- 審査の対象は、法人形態ではなく「事業計画の中身」。
- ほとんどの補助金は、株式会社・合同会社どちらも対象としている。
- 重要なのは、事業の魅力や将来性を明確に伝えること。
まとめ|徳島で後悔しない法人選択をするために
ここまで、株式会社と合同会社の違いについて、様々な角度から解説してきました。
どちらの法人形態を選ぶかという決断は、徳島で踏み出すあなたの事業の、未来を方向づける重要な第一歩です。
- 最優先すべきは「将来のビジョン」。事業の成長戦略から逆算して選ぶ
会社の最終的な目標が、大規模な事業展開や上場であれば「株式会社」、スモールビジネスや柔軟な経営を望むなら「合同会社」が基本線となります。 - 「信用」と「コスト・自由度」のどちらを重視するかで判断する
金融機関や取引先からの信用を重視するなら「株式会社」、設立・運営コストの低さや経営の自由度を重視するなら「合同会社」が適しています。 - 税金面での有利・不利はない。専門家への相談も積極的に
法人税などの税金面では両者に違いはありません。迷ったときは一人で抱え込まず、徳島県内の税理士や司法書士といった専門家に相談することが、失敗しないための確実な方法です。
株式会社と合同会社の最終チェックリスト
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
社会的な信用度 | ◎(高い) | ◯(一般的) |
設立費用(目安) | 約20万円~ | 約6万円~ |
経営の自由度 | △(法律の制約が多い) | ◎(定款で自由に設計可能) |
資金調達の選択肢 | ◎(融資、増資、上場) | ◯(融資が中心) |
おすすめのケース | 信用を重視する事業 将来、上場を目指す事業 | コストを抑えたい事業 少人数・家族での事業 |
法人形態の選択は、一度決めるとなかなか簡単には変更できません。
徳島県内で数多くの法人設立に携わってきた当事務所へ、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの事業内容や将来のビジョンをしっかりとお伺いした上で、最適な法人形態をご提案し、設立準備からその後の経営まで、全力でサポートさせていただきます。
まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたの熱い想いをお聞かせください。