社長も安心!中小事業主の「労災保険の特別加入制度」のメリット・注意点

こんにちは、徳島で社会保険労務士として経営サポートを行っている逢坂祥子です。
税理士・中小企業診断士の逢坂剛と連携し、中小企業の皆さまのお悩みを解決します。
今回のテーマは、『社長も安心!中小事業主の「労災保険の特別加入制度」のメリット・注意点』です。
このブログは3~5分程度で読み終わりますので、ぜひご覧ください。
中小事業主の「労災保険の特別加入制度」とは?
「社長は労災保険に入れない」と思っていませんか?
通常、労災保険の対象は従業員だけですが、一定の要件を満たせば、中小企業の事業主(社長など)も加入できるのが「労災保険の特別加入制度」です。
代表取締役や役員でありながら、従業員と同じように現場で作業を行う方も多くいらっしゃいます。万が一、仕事中にケガや病気に見舞われたときのために利用できる心強い制度です。
特別加入制度の大きなメリット
この制度の最大のメリットは、「無保険」状態を避けられる点です。
- 仕事中のケガ・病気に備えられる 仕事中や通勤途中のケガや病気には、法律上、健康保険が使えません。また、中小事業主は労働基準法上の「労働者」ではないため、原則として労災保険も使えません。 特別加入をすることで、原則として一般の労働者と同様に、労災保険から給付を受けられるようになります。これは大きな安心につながります。
- 家族従事者や役員も加入可能 事業主ご本人のみならず、事業主の家族従事者や、代表者以外の役員も加入対象となります。
- 保険料の分割払い(分納)が可能 特別加入は「労働保険事務組合」を通じて行うため、労働保険料を年3回(6月、9月、12月)に分けて分納することができます。資金繰りにもメリットがあります。
知っておきたい!特別加入制度の「注意点」
特別加入制度は心強い保険ですが、給付を受けられないケースがあるため、注意が必要です。
- 「社長としての仕事」は補償の対象外 保険給付が受けられるのは、「労働者として」仕事をしている場合のみです。 「社長として」の仕事、例えば、役員会やゴルフ接待などの時間にケガをしても、保険給付は行われません。
- 申請書に記載した内容・時間内のみが対象 特別加入の申請書には、あらかじめ業務の内容と時間を記載します。 ケガの原因となった業務が、そもそも申請書に記載されていなければ、保険は給付されません。
- 夜間や休日の単独作業は給付が難しい場合も 時間外や休日の労働については、「ケガをした際に他の労働者がその場に一緒にいた」ことが給付の条件になります。 夜間や休日に社長が一人で仕事をしていた場合などは、ケガをしても給付が出ないことがあります。
特別加入の保険料はいくらになるの?
特別加入者の労災保険料は、従業員の方のように「賃金」で計算できないため、ご自身の所得水準に見合った「給付基礎日額」を自ら選択し、それを基に計算されます。
給付基礎日額(日額)に365日を乗じたものが「保険料算定基礎額」となります。さらにこれに特別加入保険料率(事業の種類によって異なります。例:小売業は3/1000など)を乗じて年間保険料が算出されます。
<給付基礎日額の選び方と年間保険料の例>(※小売業の保険料率3/1000の場合の例を参考にしています)
| 給付基礎日額(A) ※16段階で選択可能 | 保険料算定基礎額(B = A × 365日) | 年間保険料(保険料算定基礎額 × 保険料率(3/1000)) |
| 25,000円 | 9,125,000円 | 27,375円 |
| 18,000円 | 6,570,000円 | 19,710円 |
| 12,000円 | 4,380,000円 | 13,140円 |
| 7,000円 | 2,555,000円 | 7,665円 |
| 3,500円 | 1,277,500円 | 3,831円 |
このように、ご自身の希望する補償額に合わせて、保険料を柔軟に設定できるのが特徴です。
民間傷害保険という選択肢
特別加入によるコスト(事務組合の会費などの手数料)が負担に感じる場合、民間傷害保険の活用を検討する手もあります。 傷害保険でも業務中のケガなどの保障を受けることができますが、比較する際は「業務中のケガも補償されるか?」を必ず確認してください。
まとめ
中小事業主の労災保険特別加入制度は、従業員が被災するケースと同じ状況で事業主が被災した場合、従業員と同じ手厚い給付が受けられます。保険料も、民間保険と比較すると低い傾向があります。
しかし、せっかく加入しても給付が受けられないという事態は避けたいですよね。この制度をきちんと理解した上で加入手続きを行えば、非常に心強い保険になることに間違いはありません。
すでに特別加入している方も、これから検討される方も、改めて注意点を確認し、今後の対策を検討してみてください。
当事務所は、「労働働保険事務組合徳島SR経営労務センターに」加入しており、この事務組合を経由して特別加入の手続きを行うことができます。特別加入の手続きから、保険料の分割払い、そして給付に関するご相談までトータルでサポートいたします。
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