【保存版】徳島での会社設立ガイド|株式会社と合同会社の6つの違いと選び方の3つのポイント~前編~

みなさん、こんにちは。徳島の税理士・中小企業診断士 逢坂剛です。
私が法人設立のご支援をする中で、よくいただくご相談が「株式会社と合同会社、どちらの形態を選ぶべきか」という点です。
そこでこの記事では、両者の6つの違いを整理しました。あなたの重要な決断を確かなものにする一助として、ぜひご活用ください。
徳島で会社設立を考えたときに知っておくべき「株式会社」と「合同会社」の違い
会社設立にあたり、多くの方が最初に考えるのが「株式会社にすべきか、それとも合同会社か」という問題ではないでしょうか。
- そもそも法人格とは?株式会社・合同会社の共通点と違い
- 徳島で選ばれている法人形態の傾向とは
この最初の選択が今後の事業展開に大きく関わってきますので、まずはそれぞれの基本的な特徴から、一緒に確認していきましょう。
そもそも法人格とは?株式会社・合同会社の共通点と違い
会社を設立して「法人格」を得ることで、法律上、個人とは別の存在として事業活動ができるようになります。
株式会社も合同会社も同じ「法人」ですが、その性格は少し異なります。
両方に共通する最大のメリットは、経営者が「有限責任」である点です。
これは、万が一事業がうまくいかなくなった場合でも、あなた個人が出資した範囲までしか責任を負わなくてよい、という大切なルールです。
個人事業主の「無限責任」とは大きな違いですね。
- 有限責任: 会社の債務に対して、自分が出資した範囲内でのみ責任を負う。
- 無限責任: 会社の債務に対して、個人資産を含めて無限に責任を負う(個人事業主など)。
両者の基本的な違いを、以下の表で確認してみましょう。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| 意思決定機関 | 株主総会・取締役会 | 社員総会(原則として全社員) |
| 出資者(所有者) | 株主 | 社員 |
| 経営者 | 取締役 | 業務執行社員 |
| 所有と経営の関係 | 分離の原則(出資者≠経営者) | 一致の原則(出資者=経営者) |
徳島で選ばれている法人形態の傾向とは
設立される会社のうち、株式会社が約7割を占めていますが、合同会社を選ぶ起業家も着実に増えています。
実際のデータを見てみましょう。
2024年に全国で新しく設立された会社は、株式会社が100,733件、合同会社が42,107件でした。(引用元: 東京商工リサーチ「2024年の「新設法人」数は 15万3,938社 最多件数を更新」2025年5月15日記事より)
やはり社会的な信用度や将来の事業拡大を考えて株式会社が選ばれやすい一方で、コストを抑えてスピーディーに始めたいというニーズから合同会社が選ばれているようです。
- 株式会社が選ばれる主な理由:
- 「株式会社」という名前が持つ社会的な信用
- 金融機関や取引先からの信頼を得やすい
- 将来、事業を大きくする際の資金集めの選択肢が広い
- 合同会社が増えている背景:
- 設立費用が安い
- 経営のルールを比較的自由に決められる
- 迅速な意思決定が可能
株式会社と合同会社の違いを6つの視点で徹底比較
ここからは株式会社と合同会社の違いを、より具体的に掘り下げていきます。
ご自身の事業計画と照らし合わせながら読み進めていただくと、どちらがよりフィットするのか見えてくるはずです。
- 設立手続きと必要期間の違い
- 設立費用とランニングコストの比較
- 代表者の肩書きと対外的な信用
- 意思決定・組織運営のしやすさ
- 出資者と経営者の関係性
- 将来の資金調達・事業拡大のしやすさ
まずは、会社設立のスタートラインである「手続き」と「期間」の違いから見ていきます。
設立手続きと必要期間の違い

手続きの手軽さとスピードを優先するなら、合同会社にメリットがあります。
一番の違いは、会社の基本ルールである「定款(ていかん)」を公証役場で認証してもらう手続きが、合同会社では不要な点です。
この工程がひとつ少ないため、その分だけ時間と手間を短縮できるわけです。
- 株式会社の設立期間の目安: 約2週間~3週間
- 合同会社の設立期間の目安: 約1週間~2週間
もちろん、書類の準備状況などによって期間は前後しますが、スピーディに事業を始めたい方にとっては見逃せないポイントです。
設立費用とランニングコストの比較

設立時の初期費用をできる限り抑えたい場合、合同会社が非常に魅力的です。
株式会社の設立には最低でも約20万円の法定費用(法律で定められた手数料など)がかかります。
それに対して、合同会社は約6万円から設立でき、初期投資を事業そのものに集中させることができます。
また、設立後にかかるランニングコストにも違いがあります。
- 役員任期: 株式会社の役員には任期があり(最長10年)、任期が満了するたびに変更登記の手続きと費用(1万円〜)が必要です。合同会社には役員の任期がないため、この手続きは発生しません。
- 決算公告の義務: 株式会社は毎年の決算を公表する「決算公告」が義務付けられていますが、合同会社にはその義務がありません。
代表者の肩書きと対外的な信用

社会的な信用度や世間一般での知名度という点では、今のところ株式会社の方が有利と言えるでしょう。
「代表取締役」という肩書きは、ビジネスシーンで広く知られており、相手に安心感を与えやすい傾向があります。
一方、合同会社の代表者は「代表社員」という肩書きになります。
まだまだ馴染みが薄いため、事業内容を説明する際に、法人形態について補足が必要になる場面もあるかもしれません。
- 株式会社の代表者: 代表取締役
- 合同会社の代表者: 代表社員
ただし、法人形態だけでビジネスの価値が判断されるわけではありません。
Amazonの日本法人であるアマゾンジャパン合同会社や、グーグル合同会社のように、世界的な大企業が合同会社の形態を選択している例もあります。
意思決定・組織運営のしやすさ

意思決定のスピードと、組織運営の自由度を重視するなら、合同会社が非常に適しています。
株式会社では、会社の重要な方針を決める際には「株主総会」での決議が必要となり、招集手続きなどで時間と手間がかかることがあります。
その点、合同会社は出資者である「社員」全員の同意で物事を決められるため、環境の変化に対応した迅速な経営判断が可能です。
- 株式会社: 株主(出資者)の意向が経営に大きく影響する。重要な意思決定には株主総会の決議が必要。
- 合同会社: 社員(出資者=経営者)の総意で迅速に意思決定できる。
また、利益の配分方法にも大きな違いがあります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| 意思決定のルール | 出資比率(株式数)に応じた多数決 | 原則、社員の頭数による多数決(定款で変更可) |
| 利益の配分 | 出資比率に応じて公平に配当 | 定款で自由に決められる(貢献度に応じて配分なども可) |
出資者と経営者の関係性

株式会社と合同会社では、会社にお金を出す人(出資者)と、会社を動かす人(経営者)の関係性が根本的に異なります。
株式会社は「所有と経営の分離」が原則です。
これは、お金を出す株主と、実際に経営を行う取締役が、必ずしも同じ人物でなくても良いということです。
これにより、経営手腕のある専門家を外部から社長として招く、といったことも可能になります。
対して合同会社は「所有と経営の一致」が基本です。
原則として、お金を出した人(社員)が、そのまま経営も行います。
- 株式会社の特徴:
- 出資者:株主
- 経営者:取締役
- 株主と取締役は別人でもOK。経営には関与しない出資者も存在する。
- 合同会社の特徴:
- 出資者 兼 経営者:社員
- 原則、出資した人自身が経営にも携わる。
この違いは、特に複数人で起業する場合に重要なポイントとなります。
将来の資金調達・事業拡大のしやすさ

将来的に、外部から大規模な資金を調達したり、株式上場(IPO)を目指したりするビジョンをお持ちの場合は、株式会社一択となります。
株式会社は「株式」を発行することで、広く一般の投資家から資金を集める「増資」という手段が使えます。
これは、事業を大きく成長させるための強力なエンジンとなり得ます。
一方、合同会社は株式を発行できないため、この方法で資金を集めることはできません。
資金調達の方法は、金融機関からの融資や、国・自治体の補助金・助成金などが中心となります。
- 株式会社が向いているケース: ベンチャーキャピタルからの出資を受けたい、将来的に上場して社会的なインパクトを大きくしたい。
- 合同会社が向いているケース: 自己資金や融資を中心に、身の丈にあった堅実な経営を目指したい。
まとめ
今回は、株式会社と合同会社の基本的な違いを6つの視点から比較・解説しました。
次回の記事では、これらの違いを踏まえ、「徳島で起業するなら、具体的にどんなケースでどちらの会社形態が向いているのか」を詳しく掘り下げていきます。
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