賃上げ促進税制とは?徳島の中小企業が賃上げで使える税制優遇を税理士が解説

賃上げは、避けて通れない時代になりました

ここ数年、徳島で事業を営む経営者にとって、「賃上げ」は、好むと好まざるとにかかわらず、避けて通れないテーマになっています。
その象徴が、最低賃金の引き上げです。徳島県の最低賃金は、2024年(令和6年)に84円という過去最大級の引き上げが行われ、さらに翌年の改定でも66円引き上げられて、2026年1月から時間額1,046円となりました。わずか2年で、150円もの上昇です。一部報道等で「徳島ショック」とも呼ばれたこの大幅な引き上げは、県内の多くの事業者に、賃金の見直しを迫っています。
最低賃金だけではありません。深刻な人手不足のなかで人材を確保するため、そして物価高のなかで従業員の生活を守るためにも、賃上げは、経営者が向き合わざるを得ない課題になっています。これは一時的な話ではなく、社会全体の大きな流れ、いわば時代の必然です。
とはいえ、賃上げは人件費の増加に直結するため、経営者にとって負担が重いのも事実です。そこで知っておいていただきたいのが、この賃上げの負担を、税金の面から支えてくれる「賃上げ促進税制」です。この記事では、徳島の税理士・社会保険労務士の事務所の立場から、この制度の基本と、経営者が見落としがちなポイントを解説します。
※最低賃金の金額は改定されることがあります。最新の金額は徳島労働局のホームページでご確認ください。
賃上げを支える「賃上げ促進税制」とは

賃上げ促進税制を、ひとことで言うと、前年より従業員の給与を増やした事業者が、その増加額の一定割合を、税金(法人税・所得税)から直接差し引ける制度です。
避けられない賃上げに踏み切るとき、その負担をいくらかでも和らげるために、国が用意している仕組みだと考えてください。「賃上げをしたくてもコストが重い」という事業者を、税の面から後押しするものです。
ポイントは、「所得から差し引く(所得控除)」のではなく、「税額から直接差し引く(税額控除)」という点です。税額控除は、計算された税金そのものを減らすため、負担の軽減効果が大きいのが特徴です。
ひとつ注意したいのは、ここでいう「給与」には、誰の給与でも含まれるわけではない、という点です。対象になるのは、従業員(パートやアルバイトを含む)に支払う給与です。一方で、社長などの役員に支払う役員報酬や、役員の親族(家族従業員など)に支払う給与は、対象になりません。「自分の役員報酬を上げれば控除を受けられる」というわけではないので、注意が必要です。あくまで、従業員の給与を増やしたことが対象になる制度だと考えてください。
具体的な控除の割合や要件は、近年たびたび改正されており、今後も見直される可能性があります。最新の控除率や要件は、中小企業庁や国税庁の公式サイトでご確認ください。
- 中小企業庁「中小企業向け 賃上げ促進税制」:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
- 国税庁「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1288.htm
なお、この制度は、近年の改正で計算方法が簡素化され、また、賃上げをした年に控除しきれなかった分を一定期間繰り越せる仕組み(繰越控除)も設けられたことで、以前より使いやすくなっています。
経営者こそ知っておきたい——見逃されやすい制度です

賃上げ促進税制は、改正で使いやすくなったこともあり、適用漏れはだいぶ減ってきました。それでも、他の税理士事務所から当事務所に移ってこられたお客様の過去の申告書を確認すると、いまだに、この制度を適用し損ねているケースを見かけることがあります。
なぜ、こうした見落としが起きるのでしょうか。
ひとつの理由は、申告書を作るのは税理士であるため、経営者自身が制度の存在を知らないままになりやすいことです。税理士に任せていれば適用してもらえるはずですが、もし担当の税理士が見落とせば、経営者はそれに気づくことができません。だからこそ、経営者自身も「こういう制度がある」と知っておくことが、適用漏れを防ぐうえで大切なのです。
そして、特に見落とされやすいのが、次の2つのケースです。
法人だけでなく、個人事業主も対象です
「賃上げ促進税制は、法人(会社)のための制度」と思っている方が、少なくありません。ですが、これは誤解です。
賃上げ促進税制は、青色申告をしている個人事業主も対象です。従業員を雇っている個人事業主が、その給与を前年より増やせば、増加額の一定割合を所得税から差し引くことができます。「うちは法人じゃないから関係ない」と思い込んで、使えるはずの制度を見逃してしまうのは、非常にもったいないことです。
所得の多い個人事業主は、特に効果が大きいことがあります
これは、特に知っておいていただきたい点です。
賃上げ促進税制の控除額には、「税額の20%まで」という上限があります。法人も個人も、この上限は同じです。
ここで、個人事業主ならではの事情が関わってきます。個人事業主の所得税は、所得が大きいほど税率が高くなる「累進課税」です。つまり、所得が多い個人事業主ほど、納める所得税額そのものが大きくなり、その20%という控除の枠も大きくなります。
そのため、従業員を雇って賃上げをしていて、かつ所得や納税額が多い個人事業主にとっては、賃上げ促進税制による負担軽減のインパクトが、非常に大きくなることがあります。それにもかかわらず、「個人事業主は対象外」という思い込みから見落とされているケースが見受けられます。該当しそうな方は、ぜひ一度、ご自身の申告で適用されているか確認してみてください。
賃上げで見落とされやすい「社会保険料」の負担

賃上げを検討するとき、見落とされやすい、けれども非常に重要なことがあります。それは、社会保険料の負担です。
社会保険料は、給与の額に応じて決まります。そのため、従業員の給与を上げれば、それに連動して、会社(事業主)が負担する社会保険料も増えます。そして、この増加額は、経営者が思っている以上に大きくなることが少なくありません。
賃上げを決めるとき、多くの経営者は「給与をいくら上げるか」という、給料のアップ分に目を向けます。もちろんそれは大切ですが、その裏で増えていく社会保険料の負担まで見ておかないと、「賃上げした後で、思った以上に人件費が膨らんでいた」ということになりかねません。給料の増加分だけを見て賃上げを決めてしまうと、この社会保険料の増加を見落としてしまうのです。
当事務所では、税理士・中小企業診断士に加えて、社会保険労務士が在籍しています。賃上げを検討する際に、「給与をいくら上げると、社会保険料がいくら増えるのか」を、社会保険労務士が事前にシミュレーションできます。そのうえで、賃上げ促進税制による税の軽減も含めて、賃金をいくらに設定すれば無理がないかを、税理士と社会保険労務士が同時に検討してご提案します。この判断を、専門家2名で同時に支えられるのが、当事務所の強みです。
賃上げとあわせて知っておきたい、徳島県の支援

賃上げを考えるなら、あわせて知っておきたいのが、徳島県独自の支援制度です。
従業員に「選ばれる会社」になるためには、給与を上げるだけでなく、働きやすい職場環境を整えることも大切です。就業規則の整備や、職場環境の改善、労務管理システムの導入——こうした取り組みは、人材の確保や定着につながります。そして徳島県には、これらの取り組みを支援する補助金があります。
つまり、賃上げ(税制で支える)と、働きやすい職場づくり(県の補助金で支える)は、どちらも「人材を確保し、選ばれる会社になる」という同じ目的に向かう、車の両輪です。賃上げだけに目を向けるのではなく、職場環境の整備まで含めて考えることで、より効果的に人材を確保できます。
この徳島県の補助金については、当事務所の社会保険労務士が「徳島県『魅力ある職場環境整備補助金』の活用ガイド」で解説していますので、あわせてご覧ください。
賃上げの判断は、税と労務の両面から
ここまで見てきたとおり、賃上げは、避けて通れない時代の流れであると同時に、税額控除・社会保険料・職場環境の整備など、税と労務の両面が複雑に絡み合うテーマです。
だからこそ、「賃上げ促進税制を使えているか」「社会保険料を含めて無理のない賃金設計になっているか」「あわせて使える支援はないか」——こうした点を、税理士と社会保険労務士が連携して確認することが大切です。
当事務所では、徳島の中小企業・個人事業主の賃上げや人件費に関するご相談を、数多くお受けしてきました。
- 税理士×中小企業診断士のダブルライセンスで、賃上げ促進税制の活用から経営判断まで、数字の面でサポートします
- 社会保険労務士が在籍しているため、税額控除と社会保険料を同時に試算し、無理のない賃金設計を一緒に考えられます
- 過去の申告で賃上げ促進税制の適用漏れがないか、チェックも承ります
- 徳島の地元で開業12年目。地元の事業環境や、最低賃金の動向も踏まえてアドバイスいたします
なお、この記事では、分かりやすさを優先して、賃上げ促進税制の要点を簡単にご説明しています。実際に適用を受けるには、対象となる給与の範囲や細かな要件の確認が必要です。「自社は対象になるか」「いくら控除を受けられるか」といった具体的な判断は、税理士にご相談ください。
「賃上げを考えているが、税金や社会保険がどうなるか不安」「自社は賃上げ促進税制を使えているだろうか」——そうしたお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。初回30分の無料相談(対面・オンラインいずれも対応)をご用意しています。
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